アニメ転スラを貶める、悪質な『価値観スイッチ』
こんにちは。馬込巣立です。
2018年秋アニメは豊作であると言われ、そのシーズンもそろそろ2018年そのものと共に終焉が見えてきましたね。今回はそんな秋アニメについてのお話をば。
最近、「転生したらスライムだった件(以下、転スラ)」というなろう発のアニメが「ここ数話くらいつまんなくね?」と言われ始めているようです。
まあアニメ視聴者の中ではどちらかというと少数意見みたいですね。大半の視聴者は楽しんで見ているというか、苦痛に感じながら見る人はそんなにいないでしょうからそれも当然ではありますけれど。
しかし最初からつまらないと主張するのではなく、何話か見た上で「最近つまらない」という意見が出てくるのなら原因は作品側にもありそうなものです。さて実際のところはどうなのでしょうか?
私の話をするならば、実は3話か4話くらいで見るのをやめたんですけどその頃はまだ周囲にも今ほど「つまらない」という声はありませんでした。
因みに何故私が視聴を中断したのかというと、まあ色々あるにはあるんですが最大の要因は3話の牙狼族との戦いかなと。
「目の前で親父を殺された挙句その死体を食われて親父の姿に化けた相手に威嚇される」というシーンで親父を殺された狼がめっちゃあっさり降伏したのが個人的に辛かった。高校時代に尊敬していた父親に死なれて体調不良起こすレベルで落ち込んだ私には「いや復讐心とか無いんけ」という感想しか出てこない場面でしたね、ええ。
ただ、Twitterやまとめサイトなどで意見を見ていくとどうにも「転スラは他のなろう作品とは一味違う」という前評判に翻弄された方々が多く見られるようでした。
まず私がアニメを見た限り、しばらくの間は具体的にどこが「他のなろうと一味違う」のかいまいちわかりませんでした。
後々になってちょっと見えてきた部分もあるので、それは後述します。
例えばリゼロの原作読者がリゼロのアニメで同じ主張するならまあわかるんですよ。あの作品の主人公は事あるごとに死んでは死ぬよりちょっと前まで戻り、それを繰り返しながらバッドエンドの連続の中でトゥルーエンドかハッピーエンドに繋がる道を模索するという作風でしたよね。
これって巷で言われる、あるいはイメージされている「チート能力手に入れて何も努力しないまま目の前の問題をあっさり解決していく」という典型的ななろう小説とは違うんですよ。ただ理不尽な死を迎える中で最適解を見つけるまでやり直しを強要されてる上に、それだって無限にできるわけでもなさそうな描写まであるわけですから。
つまりリゼロが「他のなろうと一味違う」のはわかるんです。では、転スラはどうでしょう?
正直に言うと普通のなろう作品だと思うんですよね。
だって「チート能力手に入れて何も努力しないまま目の前の問題をあっさり解決していく」話でしょこれ。それが悪いというんじゃなしに、なろう嫌いな人が叩くポイントは揃えてしまっているわけですよね。
それなのに「そんじょそこらのなろう作品と一緒くたにされちゃ困るぜ!」みたいな評価してる人がいるのなんなんだよと。
私も前評判を聞いて「へぇ、じゃあリゼロこのすばみたいな作風なのかな」と思ってアニメ見た結果が上にも記した3話だか4話切りですよ。求めてたのと違う。
そしてこれ、転スラにはなんの罪もないんです。ただなろう小説として頑張ってきてたのに「他のなろう小説とは違う」なんて触れて回る連中がいるからそれを受けて期待してた視聴者側に悲しい勘違いをかまされただけなんです。
そんでまあ、まとめとか見てみると「話が違うじゃねえか普通のなろうだったぞ!」という意見も当然ちらほら見受けられるんですね。
で、それに対して出てきたのが「あれはなろう小説としてレベルが高い作品だから」「転スラ無理なら他のなろう全部無理だぞ」とかいう勢力です。「一味違う」勢はどこ行ったんだよ。あいつらに「どこが一味違ったのか」を説明させろや。
これが今回の記事のタイトルにもした『価値観スイッチ』です。
この場合のスイッチとはポチッと押すやつではなく、昨今ではオンラインゲームなどで用いられる戦術の一種である「前衛と後衛の入れ替わり」みたいな動きを指します。厳密には違う意味合いの言葉だったりするかもしれませんがニュアンスだけでも伝われば幸いです。
で、今回発生している「普通のなろうとは一味違う→普通のなろうだぞ」という価値観のスイッチこそが転スラを叩く人が増えてきている原因なのではないかなと個人的に思ったんですね。
まず「転スラはそこいらのなろう小説とは違う」という勢力が前に出て特にファンでもアンチでもない人達から興味関心を集め、実際にアニメを見た人々が「いや典型的なろうやん」と言い始めると「転スラはなろうだぞ」という勢力と入れ替わる。
要するに「持ち上げられてるけどこの作品ってそこまで面白くないのでは?」という評価というか印象というかが特別アンチでもなかった層からも一定数生じてしまったのではないかなと思うんです。
この一連の動きが擁護を装ったアンチによる印象操作とかなら手口が鮮やか過ぎて舌を巻くレベルで完成されていると言えますし、仮に「一味違う」勢がガチの転スラファンだとしたらテメェの好きな作品の見所も説明できないまま肝心な時に引っ込んでる馬鹿の集会です。
どちらにせよまだ誤魔化しようのある序盤も過ぎて話の内容に「なろうっぽさ」が生じ始めた今、転スラの評価を下方修正する人がいるのは致し方のない事なのかもしれません。
で、ここからは個人的な転スラへの評価をば。
というのも私は3、4話で切ったので本格的に評価が下がり始める前にこの作品を「自分には合わないな」と判断した立場なわけです。そんな立場で一方的に「今になって評価を下げてる人は恐らく~」だのと自論を述べても、自分だけ外野で好き勝手言ってるみたいで鬱陶しいかなと思いまして。
まあ4話くらいまでしか見てない人間の感想ですから確実に蛇足となるでしょうしぶっちゃけ批判的な内容も含むので、興味ない方はここで読むのをやめて下さっても構いません。
そんじゃ書いていきます。
まずは良い点から並べていきましょう。
スキル獲得とかの演出はCGとか使ってて「金かかってんなー」と思いましたね。何となくシャフトっぽい動きなのも面白い。ネットでは「見づらい」などの否定的意見も見られますが私はああいうの好きですよ(というかデスマよりは見やすい)。
豊口めぐみさんのいかにも人工音声っぽい演技もマッチしており非常に良い。あーこれ“答え”だな……。“答え”っすねー……。
それと自身がスライムになっていると徐々に実感していく過程の描写は普通に生々しくて良かった点だと思います。
触覚も視覚も無い状態で「多分こんなかな」と自分の姿をイメージしていく様子はなかなか説得力があり、ここに関してはそれこそ「そんじょそこらのサクッと転生するなろう小説とは異なる点」として高く評価できるんじゃないでしょうか。
まあそういう具体的な擁護してる人見た事ないけどな。なんで特別ファンでもない俺の方がフォローしてんだ。
あとこれはすっげぇ地味なポイントになってしまうんですが「OP曲が男性ボーカル」という前例を作ったという点でも他のなろうとの違いは見受けられますね。
なろうに限らずラノベ原作のアニメって基本はテーマソングに女性ボーカルばっか使うんですけど、個人的には「そこは作風に合わせるべき」という考えなのであのチョイスは高く評価しています。曲そのものはどんなだったか憶えてないけど。
とまあ、高評価するポイントはこんな感じで。次は低評価ポイントです。
私はアニメのキービジュアルで主人公が人間形態な時点で「ん?」とは思っていました。でもその頃は「まあ人間の姿になるくらいはあり得るか。あとは料理次第だな」と思い直してクリーンな気持ちでアニメを見ようと思えたんですね。
で、後日「人間形態になってからは滅多にスライム形態に戻らない」と知人から聞いていよいよ「は?」となりました。
そもそも私、タイトル詐欺アレルギーなんですよ。で、この作品って「現代日本で生まれ育った主人公が異世界にスライムとして転生する」というのが趣旨なはずですよね。「じゃあ常時スライム形態であるべきと違うんか」「ついでに大手ゼネコン勤務のアラフォー童貞男というパーソナリティも活かすべきと違うんか」とどうしても思ってしまうんですよね。人間形態になるにしても、そこは人里限定とかにするべきなんじゃねえのと。あと人間形態は生前のおっさんの姿であるべきじゃねえのと。
つっても作者のインタビュー記録みたいなのを見る限りそこまで深い考えがあって主人公をスライムにしたわけではなかったようなので、「今の作家の作品に向ける姿勢なんてそんなもんか」くらいの気持ちでスルーする事にしました。
で、アニメを見ていて「アカンなこりゃ」と思ったポイントがあと二つあるんですけどぶっちゃけその二つは原作と無関係な部分の話になります。
まず致命的にテンポが悪い。これは原作読者の方でさえ指摘している部分であり、アニメ制作のいろはなんざ知った事じゃない私から見ても酷い出来であると言わざるを得ません。
第一話から第二話の後半までの流れは回想シーンで5分かければ説明できる範囲です。何なら「大手ゼネコン勤務のアラフォー童貞男」という設定を作中で使わないなら生前の描写自体不要なのだからバッサリ切るべきだとさえ言えます。
アニメ一話は「ゴブリン達に崇められて牙狼族との戦いに備える」ところから始めても良かったんじゃないかと思うんですよ。んで必要な情報はちょいちょい回想で小出しにしときゃアニメ6話までは序盤とかいうふざけた擁護もされずに済んだかもしれないんです。いつまで序盤やってんだよ手際最悪か。
で、もう一つアニメ側の失敗に主人公役を務める声優さんのチョイスミスが挙げられます。
先に自己弁護も兼ねて申し上げておくと、私に「声優の岡咲美保さんを不当に貶める意図」なんてもんはありません。
で、何が問題かというとこの岡咲さん、言っちまえば演技がお利口さん過ぎるんです。どういう事かというと、求められた範囲でしか演技できてないっぽいんですよね。現場の様子を見たわけじゃないので「絶対そうだろ」と確定するのは無理ですけど。
例えばリムルが水に落ちて「がばげば」言ってるシーンとか、あるいはターザンの真似して「あ~ああ~」と言ってるシーンとか見る限りだと「ここはもっとふざけたアドリブ入れてよかったんじゃないの」と思えてならないんです。他にはネットで結構叩かれてた威嚇の咆哮シーンとかも、もっとデスボイス出すとか現実の狼の鳴き声に寄せるとかやりようはあったでしょう。
具体例を出すならこのすばとかわかりやすいですよ。主要登場人物の役を務めている声優さん全員が何かしらタイミングを狙ってぶっこんでくるので、見ている側も急に面白くなる瞬間があると弁えながらじっとアニメを注視するわけです。
めぐみんの「イイッ↑タイ↓メガァァァ↑」なんて動画作られるレベルでウケてるでしょ。そういう事です。
で、調べたところ岡咲美保さんってまだ新人声優さんみたいなんですよね。なのにさんざっぱら神輿担がれて持ち上げられてハードル上がりまくりな作品、それもサブキャラとかじゃなく主人公の声とか急にやらせたら上手くいくもんも上手くいかないんじゃないですかね。
もちろん「プロが甘えた事言うな」だとか「仕事選べる立場じゃないし断れないだろ」とか言われるかもしれませんが、先に述べた通り岡咲さんは悪くないんですよ。
誰か知りませんけど声優をチョイスする人が盛大にミスったんです。
私はもう転スラ見てませんけど、いつか岡咲さんが更なる成長を遂げて別の作品に出演する時を楽しみにしています。アイムならネタも演技もガチな先輩に恵まれてるでしょうし、根性さえあれば結構上の方まで行くでしょ多分。
と、こんな辺りで私なりのアニメ「転生したらスライムだった件」に対する評価は終わりです。
原作の小説は読んでないんですけど「人間形態になってからはあまりスライム形態に戻らない」という情報がある以上今後も読まないと思うので、この作品に関するあれこれは今回が最初で最後ですかね。
気付けばもう2018年も残すところ一ヶ月。平成最後の年末が迫ってきています。
私は現在自作小説を第一章プロローグからぶっ通しで再推敲及び大規模改稿している関係で余暇時間ですら忙しない状態ですが、これはこれで楽しんでいるところです。
ていうか普通に外が暖かいせいであまり12月って感じしないんですけど今冬って暖冬になるんですかね。私は暑いの嫌いなので普通に冬になって欲しいですね。
では、現場からは以上です。また次の機会があれば。