アニメ感想文『回復術士のやり直し 第6話』
皆さんこんにちは。馬込巣立です。
コメント欄の荒らしとふざけた出版業界に向けて喧嘩を売るつもりで書いている本感想記事も、いよいよ折り返し地点に到達しました。
私は「駄作はともかく落書きを出版するな」くらいに考えているため今まで感想を書く際に容赦なくぶっ叩いてきましたが、同時に良かったところがあればそこにも言及はするよう意識してきたんです。
なのでこれから見ていくであろうもう半分の回復術士についても「ええやん」と思ったらちゃんと触れていこうと思っているんですね。
で、それを踏まえた上で今回はちょっと擁護しかねます。ごめんなさいねなんか。
動画はこちら
◆概要
顔をケヤルのそれに改造されたレナードは怒りに任せてケヤルガの故郷である村を襲撃し、村人達をケヤルガをおびき出すための人質として街中で引き回します。それを見たケヤルガは引き回されている人々の中に育ての親であるアンナさんの姿がないことに気づきました。
彼はかつて殺した王国軍の兵士に変身した状態でその兵士の友人に当たる人物に声をかけ、指名手配犯である自分の存在を匂わせることで逆に相手を誘い出しました。
そしてレナードを罠にはめてから殺害し、アンナさんがいる場所に辿り着くも間に合わず目の前で事切れてしまいます。大切な人の死を経ていよいよ慈悲を捨てたケヤルガは、最後に残された村人達の処刑を阻止すべく罠が待ち受けている闘技場へと向かったわけです。
しかし彼でさえ「自分を殺すことのできる相手」と認める存在、第二王女ノルン姫がジオラル王国に帰国。
彼女の存在はケヤルガと、洗脳されて記憶を失ったはずのフレイアの心を強くざわめかせていました。
っとまあ、こんな感じでしょうか。
一応今回は結構話が進んだというか、本筋に関わってくる展開になってきたように思います。
前から思ってたんですが話が止まったり加速したりして落ち着かないんですよねこのアニメ。ルインズスターかよ。
◆良かった部分
★アンナさんの最期
先に謝罪しておきますが、今回褒められる点はここだけしか見つけられませんでした。残念。
レナードを殺害した後でケヤルガがケヤルとなって捕らえられているアンナさんのいる場所に辿り着くシーン。あそこは演出・構成ともに冴えてた場面だったと思います。
衰弱したアンナさんがケヤルの顔を見て、安心したように息を引き取ってしまい、
そしてケヤルがいくら回復術をかけても蘇生はできず、死んでしまう。
これまで主人公のケヤル及びケヤルガを支えてきた絶対的な力でもある回復術が一切通用しないまま虚しく終わる、という一連の流れはアンナさんという登場人物の感情、境遇、そして一つの物語的要素の終焉として整った形で描かれていたように思います。心なしかアンナさんの顔の作画もいつもより気合い入っているように見えましたし。
ケヤルと同じ顔をした男に辱められた女性が、本当のケヤルの顔を見て育ての親として安堵しながら死んでいく様は彼女の慈愛と哀愁を玄妙に表現できていました。
コミカライズ版を読んだ立場だからはっきりと言えるんですが、これアニメオリジナルの展開なんですよ。やはり見ていられる作品に仕上げようというスタッフのプロ意識が強く垣間見える素晴らしいシーンでしたね。
◆悪かった部分
★相変わらずケヤルガの知能が低すぎる
冒頭で自分が住んでた村の人達が拘束された状態で引き回されているところを見たケヤルガが「俺をおびき出す餌ということか」と発言するんですけど、お前この程度の展開も予想できてなかったの?
レナードの顔を自分のそれに変えた時点でケヤル本人は無事でも「ケヤルがやった」って事実が王国に伝わるの、最初からわかってたはずなんですよ。なのになんで自分の故郷が無事で済むと思ったのかが謎でならない。
まず一旦は村の安否を置いといて真っ先に自分の身を守る、これ自体は別に構わないんです。自分がいなければ自分の復讐は遂げられませんし、二週目の世界を認識しているからこそできる動きもあるでしょう。
ただコイツに関しては他人の復讐に加担したりヤる必要性のない剣聖とヤッたりでこれまでに無意味な行動をし過ぎているのが問題なんです。そんなんやってる暇あったら村人に事情話して自分の居場所だとかそういった情報を王国に売らせてヘイト削るとかやれることあるでしょ。
ていうかそもそもオメーがレナードの見た目を自分の姿に変えるとかいう場当たり的ムーブしたからこうなってんだよ。拷問されてる間ずっと何の計画してたんだ。
で、その後で行列を見て「アンナさんがいない、無事だといいが」とか言ってるんですけどクレハから「村はもう手遅れだ」って聞いてまだカップラーメン作る時間も経ってねえんだよ。村が手遅れなのに特定の一人だけ無事なわきゃねえだろ。
★シリアスなシーンで無意味にコメディタッチな描写を挟む
このアニメにしては珍しく演出方面でのダメ出しをします。
ケヤルの故郷の村人達が出てくるシーンにおいて、結構彼らが雑に扱われてる描写がされるんですね。
ここって普通に考えれば「村人達かわいそうだな」と視聴者に思わせる意図が含まれている場面のはずなんですが、この後でケヤルガがクレハとキスした際に(別に恋人でもなんでもねーはずの)フレイアとセツナが過剰反応を示すんです。
あの、視聴者の情緒を何だと思ってるんですか?
ここって救うべき相手が悲惨な思いをしているっていうシリアスなシーンであって、見ているこっちはセフレどものラブコメもどきなんざ求めてないんですよ。何ならこの重い空気が漂ってるであろう状況下でキスしてるケヤルガとクレハも頭おかしいんですけど。
なんか見てて馬鹿にされている気分になりました。
★言葉が本当にただの「言葉」でしかない
なんかケヤルガがやたらと「アンナさんは俺にとって大切な人だった」アピールするんですけど上にも述べた通りコイツその大切な育ての親を守るために行動したりもせず放置して、金と薬と嘘と【回復】を駆使してセフレ作って遊んでたんですよ。自分が王国の偉い人全員に殺意抱かれてるくらいの認識は持ってていいはずなのに。
そんで「あの人は俺の最後の良心だ」「あの人がいたから人間に絶望せずに済んでいた」とか言い始めてますけどお前の復讐に人間全体関係ねえよバカ。その大事な人を八つ当たりの口実に使うなボケ。
もう言えば言うだけ「お前本当はアンナさんどうでもよかっただろ」ってボロが出てくるんですよこのガンギマリホモ太郎。言っときますけどアンナさんの件に関してはコイツも間接的な加害者ですからね。
それともう一つ。
「アンナさんは唯一打算なしに自分を愛してくれた」「俺の育ての親になってくれた人だった」ってずっと自分の感想だけ並べてますけど、具体的な思い出を一切語らないせいで話が薄っぺらくなってしまっています。
ただでさえアンナさんって第1話の前半でちょっと出てきただけのキャラなのに、エピソードも出さずに育ての親がどうこう言ったところでそんなの肩書きでしかないじゃないですか。
割とアンナさんというキャラクターそのものは今回魅力的に描かれていたのであんまりこういうこと言いたくないんですが、こういう雑な扱いのせいで「重要な登場人物が死んだ」って感覚があまり無いんですよね。ギミックが作動しただけって感覚に陥る。
★ヤるな
今回個人的にいっちばんキツかったのがアンナさん死亡後の濡れ場シーンでした。
ちょっとこれに関してはマジでひどいと思いましたね。大切な人が死んだその日の夜に女を抱くか普通?
しかも「今日は優しくしてやれない」ってお前レナードがアンナさん犯すところ追体験したはずだろ。それでセフレと奴隷を乱暴に抱く気になる意味が全くわからんわ。
こういう時って過度のストレスで興奮自体できなくなるものだと思いますし、育ての親を陵辱した記憶を追体験したなんて日には一生女抱けなくなってもおかしくないじゃないですか。そこで自分の性欲に肯定的になるってもう、流石にこれは地上波アニメの主人公としてやっちゃダメ。やるならOVAでやれ。
こういう「大切な相手の死を蔑ろにする描写」っていうのすげぇ嫌いなので、今回はそういう意味でしんどかったです。
しかも女抱きながら泣いて涙の理由を「自分にはまだ人間性が残ってたのか」とか言い始めるんですけど、これもまたキツい。恩人の死を口実にセフレと乱暴なプレイしてる奴が自分を美化するとかどこまでも醜悪だな!
後の方のシーンでガンギマリホモ太郎が口にする「人間はなんて醜く残虐なのだろうか」ってセリフが自己紹介にしかなってねえ。
★まだこの状態での復讐を続けるつもりでいるのがおかしい
一応言っておくと「もう復讐するのはやめろ」という話ではありません。ただ二週目の世界でアンナさんが死んだという事実をケヤルガが受け止めた以上、現段階での復讐計画放り投げて次の三週目を始めない理由がわからないんですよ。
だって普通にまた世界ごとやり直せばアンナさんは生き返りますし、体も汚されてませんし、嫌な記憶もない状態なわけですよね。ていうか村人全員無傷でいられますよね。
そこで彼女達に危害が及ばないよう計画するって手もあるはずなんですが、自分の復讐に不必要な場面で謎理論展開して世界やり直しておきながら絶対必要なところでやり直さないのどう考えてもおかしいでしょ。
まあ多分ケヤルガ的にも作者さん的にもアンナさんとかどうでもよかったからこういう雑な扱いしてるだけなんでしょうけどね。本当にギミック扱いしかされてねぇな彼女。
★ノルン姫の説明と描写が不足している
以前からちょいちょい名前が出てきたノルン姫ですが、今回から本格的に登場するようですね。
で、恐らくシナリオ上の意図としては彼女のキャラクター性を「コイツは異常者だ」という風に説明したいんでしょうけどここでもエピソード不足の弊害が出てしまっています。
なんか遊び感覚で人を殺せるやべーやつみたいな説明がケヤルガの口から出てくる割に、本人の登場シーンでは半裸のおっさん蹴飛ばしてたりケヤルに小便引っかけてたりしてるだけ。
こうなると見てる側としては「サイコな殺人鬼ってよりただ性癖こじらせただけの子供やんけ」としか思えないんですよ。敵キャラとしての格が一気に下がる。
コミカライズ版では回想シーンで魔族だか何だかの死体を積み上げて燃やしてたりしたんですが、いやはや魅力のないキャラになってしまったものですわ。
まあ本来なら今回の話ってアンナさんが死んだところで終わらせるべきエピソードであってノルン出すの次回で良かったと思うんですが、無駄に女とヤッてるせいで尺足りないんですかね。だとしたら間抜け過ぎるな。
★アニメも折り返し地点まで来たしそろそろ触れるけど
この「回復術士のやり直し」というアニメについて、今まで思っていても言わずにおいたことがあります。
一言で言うとサブタイトルがダサい。
以下、これまでのサブタイトルです。
第1話 回復術士は、やり直す!
第2話 回復術士は、フレア王女を壊す!
第3話 回復術士は、奴隷を買う!
第4話 回復術士は、セツナを手に入れる!
第5話 回復術士は、新しいおもちゃを見つける!
第6話 回復術士は、血と涙を流す!
そして次回予告で出てきた7話のサブタイトルが、
ガキ向けのアニメでも今日日もうちょっと工夫凝らすわ。
何なんですかねこの患ってる割に理想にセンスが追いついてない中学生みたいなネーミング。
別に「回復術士は、」で始まるタイトルを一貫するのは悪くないんですが許せるの1話くらいなもんであと全部ダサい。末尾の「!」が余計に幼稚さを際立たせています。
まあこれに関しては本当にダサい以外に言うこともないのでこのへんにしときましょうか。
◆総評
今までで一番演出が光る回であると同時に、今までで一番主人公がクソな回でもありましたね。
作中でもそれこそ唯一と言って構わないであろう常識人のアンナさんが死亡し、いよいよ救いようのない話になってきたのをひしひしと感じます。とりあえず強引にセックスシーン入れるのをそろそろやめろ。
キャラクターの作り込みが甘いためその間で交わされるやり取りも希薄なものとなってしまい、物語全体が無味無臭となっているところにバランスとか一切考慮せずゲスな主人公と性的描写を投入するものだから結果クソになってるのがこの作品だと思います。
あとアニメレビュー動画界隈を見ているとこの作品を視聴していて不快感や虚無感から「もうレビューするのが辛い」という人も出てきているようですが、ちょっとそれはこの作品に期待し過ぎているのではないかと思うんですね。
準備運動の時点でウンコ漏らしながら踊ってるような奴が運動会で活躍できるわけないでしょ。
そのレベルの話なんですよ、これ。
公衆の面前でウンコ漏らしたガキを企業が金の力でゴリ押ししているのがこのアニメの惨状の正体であって、我々はそこに「普通にリレーでバトン受け渡したり玉投げしたりできる子供の姿」を期待するべきではないんです。そういうちゃんとした子供は別にいるって最初からわかってるじゃないですか。
じゃあどうするべきかっていうと「ウンコ漏らして踊り散らかしてる奴が次はどんな奇行に及ぶか」を記録してその悪しき前例から教訓を得るくらいしかないんですよ。
私もこの作品を批判していく中で自分の創作論の正当性を再確認することができているわけですし、バカとハサミは使いようです。創作者は名作ばかりに触れていてはならないという論もありますしね。
何はともあれここから後半戦に入るわけですが、今のところ幸いにも私は感想記事やめたいという領域にまで達していないのでこのまま最終回まで突き抜けたいところです。
最初から言っている通りここから逆転して物語が面白くなるような奇跡が起これば「面白いじゃん!」という評価に至るでしょうし、まだ私はこのアニメ版回復術士を駄作と断じてはいません。ちゃんと最後まで見届けます。
そんなどうでもいい決意を固めたところで、今回の感想記事を終わらせましょうか。
また次回の記事でお会いしましょう。
そして、
彼女の来世が、もっとまともな作品の登場人物でありますように。