アニメ感想文『回復術士のやり直し 第8話』
皆さんこんにちは。馬込巣立です。
本ブログで感想を書いてきた回復術士のやり直しもアニメ8話に到達し、残すところはあと2/3。いよいよ終わりが見えつつあります。
多分このアニメをここまで追いかけてきてるのって数少ない純粋なファンかエロ目的か自分みたいな感想述べるために「アニメを見た」という実績が欲しいだけの野次馬のいずれかだと思うのですが、これマジで円盤売り上げ絶望的な気がしてきました。別に売れなくても構わないんですけど。
そんなわけで今回の感想、語っていきましょう。
動画はこちら
関係ありませんけどサムネ画像が主人公じゃないってだけで悪い印象が薄れるのちょっと面白いですね。
◆概要
ラナリッタを後にしたケヤルガ一行はブラニッカという次の街に到着。そこはかつて王国に見捨てられた街でしたが、攻め込んできた魔族と攻め込まれた人間が和解に至り共存しているというこの作品にしては割と道徳的な土地でした。
そこでケヤルガはやり直す以前の世界で手にかけてしまった魔王である少女・イヴと出会い、その力を借りて少女とは別に存在する魔王の心臓を手にするべく暗躍する、という話が今回の概要です。
先に言っておきましょうか。
今回、この感想記事初のベタ褒め回となります。
というのも私は最初から中立的な立場で感想を述べるつもりでこのシリーズを追っているため、面白ければ面白いと称賛する記事になるんです。もし罵倒を期待していた人がいたらすみません。
もちろん傑作という評価にまでは至らないものの、割と良かったんですよね8話の内容。私も見ながら「あれ? クソじゃない……」と戸惑ったりしていました。
では良かったところを述べていきましょう。
◆良かった部分
★やっと初期の目的を意識するようになった+α
私はこれまで何度も「ケヤルガが復讐すべき相手はブレイドとブレッドだ」と言い続けてきたのですが、今回ようやく彼らに対する復讐を意識する場面があったので一安心といったところです。
いや実際破綻した言い訳で無関係な人間殺してた頃を思うとこっちとしても早く当初の目的意識を取り戻してもらいたかったので、久しぶりに本筋に絡んでいってくれるのかなと期待が止みません。まあ残り4話でどうすんだという気持ちはありますが。
それに加えて同じシーンで「フレイアの魔法に杖が耐えきれなくなってきている」という割と深刻な事情から宝玉という設定についてもスムーズに解説していたので、この話の展開はかなり巧みに進められていると思います。
因みに宝玉とは勇者の適性を持つ者が手にするとその勇者に適した形へと姿を変えるそうです。
良かった点と関係ない上にクッソ古い作品のタイトル挙げて申し訳ないんですけど、この解説を聞いてて私は「海底人類アンチョビーのオリハルコンみたいなもんかな」と思いましたね。世代がもう10~20年ほど上と誤解されかねねぇなこの例え。
★酒場でのやり取りは復讐譚の和やかな一幕って感じで結構好き
ケヤルガ達が情報収集する中で酒場で知り合った酔っ払いと仲良く飯を食うってシーンがあります。
ここでケヤルガも知らなかったブラニッカの成り立ちについて話を聞いたりするんですが、ただ情報を集めるためだけではなく復讐をテーマとした物語における箸休めとして効果的な流れだったと思います。
操られてたり隷属してる女と行為に及んでるシーンなんて見苦しいだけですし、せっかく各地を歩き回っているならこういう現地の人々と触れ合う癒やし的なエピソードも必要になってくるはずなんですよね。少なくとも私はこういうみんなでワイワイ飲んでるような場面結構好きなんですよ。防振り最終回でも似たような話しましたけど。
加えてここで交流を得たおっさん二人はこの後の戦いに巻き込まれてしまうんですが、
賛否あるでしょうけれどもここでこの二人が巻き込まれた描写を入れたのは正解だったと言えます。無かったら「おっさん二人はどうした」ってこっちとしては気になりますからね。
血が流れてるわけでもないわけですから死んでいるとも無傷で死んだふりをしているとも取れる演出になっていて実によろしい。彼らがどうなったのかの解釈をこちらで選べるようにしてあるのは地味に親切と言えます。
何ならおっさん二人があの状態になってるのってイヴとケヤルガの背後での出来事なので、「彼ら二人がおっさん達を守った」と捉えることも可能なのが演出として憎いですね。
★文字通りの血税
ブラニッカでは人間の血を魔物の餌として徴収しているらしく、金が惜しければ血を税金の一部として払い、血を抜かれるのが嫌なら金を全額出すというルールがあるそうです。
この設定は魔族と人間の共存を上手い具合に落とし込んだなと感心しました。
魔族が人間に魔族としての力を貸しているのに対し、人間は文化を与えたという話が前提にあるんですね。
しかしそれだけだと人間側の対価が足りなくないかと疑問視したところで納得の答えが提示されたため、ブラニッカという街の在り方に対する納得が違和感を拭ってくれました。そりゃ今までになかった文化を齎した上で魔物の餌になる血も提供してくれるってんなら人間も魔族社会に貢献してると言えるでしょう。
★イヴとの出会い方
ケヤルガと魔王が出会う場面、「酒場で相席になる」っていうだけでこれ自体は決して劇的な形じゃないんですよね。
そしてそれがいいんですよ。重要人物との邂逅はロマンを追い求めればいいってもんじゃない。
酒場という誰でも入れる公的な場で、相席という誰にでもあり得る事象を経てたまたま知り合ったおっさん二人と同じ扱いで食事の席をともにする。このシナリオ展開があればこそ飲み屋特有のフランクさで話しかけても違和感が薄れるわけです。
イヴのパーソナリティを考慮すれば劇的な出会いよりこちらの方が視聴者としても飲み下しやすいのかなと見ていて思いました。
加えてセツナの時のような必要性を感じないそれっぽいシーンというわけではなく、お互いに命がかかっている場面でのやり取りを経ていたからか彼女が渋々ながら共闘する流れに引っかかるようなポイントもありません。極めて自然な流れでイヴを連れて酒場から脱出していました。
未来の魔王が相手ともなればケヤルガ本人の復讐と無関係な相手でもありませんし、何ならセツナいなくてもコイツ出せば良かったんじゃないかと思わなくもないです。
★イヴが簡単に絆されないところ
洗脳されてるどこぞの王女は論外としても、セツナみたいな「お前それでいいのか」と問いかけたくなるような懐き方をしていないイヴのキャラ造形は普通に物語的な意味で出来が良い。
ちゃんとケヤルガを疑っているし客観的な視点で彼の性生活を前に取り乱しているしそれはそれとして損得勘定の末に彼とともに動くことを選んでいるのがいいですね。「助けてもらった事には感謝する」という発言に垣間見える善良な一面も含めて、ちゃんと血肉が存在している感じがあります。
正直イヴを連れて逃げた後で夜の廃屋の絵が出てきた時に「コミカライズ版では無かったと思うけどまさかここでイヴとヤるんじゃねえだろうな」と警戒したんですよ私。もしそうなってたら軽くキレてました。
◆悪かった部分
驚くべきことに、今回特に批判するポイントないんですよ。私自身すげー驚いてます。
もちろんケヤルガの「お前には覚悟が足りない」とかいう「どの立場から言ってんだよ」な発言とか無意味に挿入される性的描写とかは気にならないわけじゃないんですけど、なんかもうこんだけ褒められる点が出てくると各項目ごとの評価を総合して結果今回は黒字なんですよね。
なので今回の批判点については触れないこととします。頑張ったなあ、回復術士。
◆総評
私も「このアニメ嫌いだしボロクソ言ったれ」みたいな姿勢を一時期取りそうになっていた頃がありました。しかし今は中立の立場で評価し始めて正解だったと思っています。
もちろん今回得た好印象だけでこれまでとこれからの悪い点が帳消しになるはずもありません。コミカライズ版で予習している身としてはまだまだここから生じるであろう問題点があると知っていますし。
ただ一応この8話単体での評価としては「良かったんじゃない?」くらいに落ち着かせておこうと思います。
また次回からは改めて色眼鏡外した状態でアニメを追いかけていく次第です。
それと、このアニメについてもう一つ話題が。
こちらをご覧下さい。
第231回 放送と青少年に関する委員会 | BPO | 放送倫理・番組向上機構 |
どうやらこのアニメ、BPOに一度目をつけられたみたいですね。その上で「とりあえず肝心な部分隠してるし放送時間は深夜なんだからよくね?」という評価に落ち着いたようです。
私は以前「回復術士のやり直しはクソアニメとして語り継がれることで業界の現状を変えてくれるかもしれない」という期待をしていました。
しかしどうやらこれに関しては全く別の観点から業界に貢献してくれているようです。
だってこれ「深夜帯アニメで局所隠してれば性的描写は許す」つってんですから、今後BPOは同じ条件を満たしている全てのアニメ作品にケチをつけられなくなったって事なんですよ。真っ黒な修正や謎の光で隠してさえいればヨスガノソラも異種族レビュアーズも地上波放送が許されるんです。いやはや素晴らしい。
こうした前例を作ったのは素直に偉業と呼んで差し支えないのかなと私は認識しています。
ひとまず放送倫理・番組向上機構が向こう数年くらい言い訳できなくなったところで今回の感想記事を終わらせましょう。
また次回、9話の感想記事にてお会いできれば幸いです。