不在の巣

なろうで小説を書かせてもらっている馬込巣立のブログです

異世界転生者殺し《チートスレイヤー》って実際どうなんだろう

 皆さんこんにちは。馬込巣立です。

 

 最近Twitterなどで異世界転生者殺し《チートスレイヤー》なる作品が話題ですね。この記事をご覧の方々は既にご存知かもしれませんが。

 

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 この作品の原作者は実写映画化も果たした有名な漫画作品、賭ケグルイの原作者である河本ほむら先生。作画担当の山口アキ先生も堕イドルなどの作品を世に送り出しているプロの漫画家さんです。

 

 そんな彼らによって生み出された本作の趣旨が「チート能力を使って好き勝手やってる異世界転生者を異世界人である主人公が殺す」というものなんですね。多分。

 まだ一話しか投稿されていないので今後のどんでん返し次第ではそこも変わってくるでしょうけど。

 

 実はそういう系統の作品って結構多くて、何なら「チートスレイヤー」なるタイトルの作品自体が既にどっかのWEBサイトに存在しているらしいです。私は興味ないので調べてませんが、多分検索したら出てくるんじゃないでしょうか?

 

 んで、この異世界転生者殺しなる作品が今すんげえ勢いで物議を醸してるというか読者の皆さんにぶっ叩かれてるんですよ。

 

 理由としては「既存の作品を大して理解もしないまま安易にパロって擦るような内容だから」ってものでして、まあ要するになろう系に対するアンチ・ヘイト創作を商業誌に掲載しちゃったってのが皆さんの怒りに触れたわけです。

 

 具体的にどんな感じでパロってるのでしょうか?

 わかりやすい画像がネットに転がっていたので貼り付けますね。

 

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 何というか、なろう小説の有名どころをテキトーに揃えた感がありますね。

 しかもSAOの主人公であるキリトのパロディキャラがこいつらのリーダー格なんですが、SAOはなろう小説じゃない上にキリトは異世界転生してません。何なら他にも転生者じゃないキャラやそもそも戦闘能力を持たないキャラまでチート能力持ちの元ネタになっています。

 多分こういう点が理解の不足として叩かれてる要因の一つなのかなと。

 

 肝心の内容はというと賢者の孫のシン=ウォルフォードをモデルとしたっぽいキャラが主人公の村を焼いて幼馴染の女の子を屍姦して、一度死にかけた主人公が命の恩人である謎の魔女から知恵をもらってそいつらに復讐していく」といったもの。

 そしてそんな蛮行をかました孫のパロディキャラが他の転生者にその行為を咎められた(といっても「サボってんじゃねえ」程度のもの)時のリアクションが

 

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 これだものな。

 

 これを初めて見た時、私の中でこの作品への評価は「他作品のキャラっぽいキャラデザのゴブリンに他作品のネタをやらせるだけのクソ漫画」といったところに落ち着きました。あくまで現状の評価ですけどね。

 ついでに言うと魔女が語る中で羅列したチート能力の一つにパル◯ンテという言葉が用いられていたので、恐らく作者側も他作品の要素を取り入れている事に対して自覚的なんだと思います。

 

 またこの漫画、「やたらと異世界転生系作品に対する偏見がキャラクターによって表出している」という特徴があるんですよね。

 

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「チート能力でイキってるだけの陰キャ野郎」は事実そういった要素を持つ主人公への批判として度々見られる類の評価ですし、「想定外の要素は必要ない」「ストレスフリーに無双する」はどちらかというとファンサイドから出てくる定型句ですね。実際私もTwitteramazonレビューで両方見た覚えがあります。

 

 まあ実際そういう作品はありますし私もそれら作品群に対し「つまんねー」と思う立場なわけですが、問題なのはそういう当てこすりを試みている割にパロディ先の作品はそうでもないパターンが多いってところです。

 何ならSAOのキリトとかリゼロのスバルなんて作者に虐待されてんのかってレベルで定期的に過酷な状況へと追い込まれますし、このすばのアクアに至っては泣いてない時の方が珍しいでしょ。チート能力でイキってるだけの陰キャがアニメでチンパンジーみたいな悲鳴上げないでしょ。

 

 こういう元ネタへの理解、配慮、そして何よりリスペクトが足りてない時点でパロディ作品として見た上でも愛が無いなと思ってしまうわけですよ。

 

 で、作者が自作品を愛してないのはまあわかりました。しかし結局は客向けに売り出されたエンターテイメント、娯楽としてのクオリティが担保されていればそれでいいっちゃいいんです。

 

 つーわけでじゃあ娯楽としてはどうなのかってところで見てみたところ別に面白くも何ともない。

 本当に申し訳ないんですけど、第1話の時点で見どころが皆無なんですよ。

 

 いや何となくわかりますよ、多分この作品って「反則じみた強大な力にどう隙間を縫って対抗するか」みたいなのが見どころとなるよう読者に認識させたいんでしょう。まだ1話しか出てないから知らんけど。

 

 でもそれだったら1話の時点でやれよって話じゃないですか。

 

 現時点で本当に誰が読んで喜ぶ作品なのか全然わからないんです。

 別に復讐を遂げる要素もないし、エロいシーンもほぼ1コマ(しかもクソ味気ない)だけで終わってるしでどこにも需要が見受けられない。そもそも主人公が無個性過ぎるし魔女も主人公助けたのと顔芸以外になんもしてないので、主役の活躍なるものが存在しません。

 

 強いて言うなら安易過ぎる他作品のパロディに対して「やりやがったwww」みたいな寒いノリで嘲笑的な態度を取る人くらいしか高評価してくれないと思うんですけど、仮にそのノリにエンタメ性があったとして一発しか撃てないでしょその弾。

 

 つまるところ第1話で1人目を片付けられなかった時点でこの作品は出オチにすら失敗してる駄作でしかないんですよ。

 

 愛が無い、面白くもない、じゃあこの漫画は何だっつー話ですね。

 

 今から書くのは完全なる私個人の邪推であり妄想なんですけど、多分これって賭ケグルイでヒット出した河本ほむら先生に雑誌の編集部が「異世界チートものを書いてください」とでも依頼したんじゃないでしょうか。

 で、依頼された側はなろう小説とかそういうの一切興味なかったけれど急な話だったりドラゴンエイジって事はKADOKAWAからの依頼だから断りづらかったりして話を作るしかなくなり、結果として急ごしらえで生み出されたのがコレだったと。

 

 つまり「時間足りなかったからテキトーな出来になったんじゃね?」って事です。

 

 もちろんこれは私の頭の中から生じた話であり現実がどうであるかとは関係ありません。ただ普通はこういうのってパロディする前に他作品について軽く調べるはずですし、「このキャラは異世界転生してない」「このキャラはチート能力で楽してるわけじゃない」とわかればこんなアンチ・ヘイト創作のネタにしてもろくな事にならないって想像つくと思うんですよ。

 

 そりゃ河本ほむら先生が一時期なろうで多く見られた異世界転生チートものをよく思っておらず、時期を大きく外したものの今になってヘイトネタし始めたって可能性も皆無ではありません。

 ただその場合って「嫌いになるきっかけとなった作品」があるはずで、作中に滲み出ているような理由で嫌いになったならSAOをネタにしてるのはなんかおかしくないかと感じてしまうわけです。

 

 まあ言うてここで私がああだこうだ言っていても仕方ないので妄想はこのくらいにしておきましょう。

 

 さてこの漫画が批判の対象となっている、という件について最後に一つ触れておきたい話があります。

 

 この漫画の作画担当である山口アキ先生ですが、作品の批判に耐えかねたのか何なのか知りませんがTwitterのアカウントに鍵をかけてしまいました。

 

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 商業誌で連載してる漫画家さんがTwitterのアカウントに鍵かけるって結構な大事だと私は思っています。何故かというと宣伝効果が大きく損なわれてしまうからです。

 利益を度外視してでも自らに向かう批判を遮断したかったのでしょうか。事によっては本作の内容について山口アキ先生ご自身、思うところがあったのかもしれませんね。

 

 ただ安心したのはネットの意見を見ていく限り山口アキ先生に対して攻撃的な意見は少数派であるというところです。

 

 主に責められているのは原作者である河本ほむら先生で、まあどんな事情があれ他作品を舐め腐った作品を世に送り出した点については普通に問題ですからそれは受け入れてもらうとして。

 私も話を作った張本人でもないのに責められるの流石に不憫だなと思っていましたから、そこは少しホッとしました。こう言ったらなんですがヒット作出したわけでもないのにKADOKAWAの雑誌で賭ケグルイの作者と組まされたら大半の漫画家は「嫌です」って言えないでしょうし。

 

 まあ今後どうなるか知ったこっちゃありませんが、異世界転生者殺しなる作品が単なるアンチ・ヘイト創作で終わらない事を祈るばかりです。

 気になる点も全く無いわけじゃないですからね。例としていくつか並べますけれども。

 

①1話最初の見開きカラーページに主人公の姿がない

②タイトルの割に「これから転生者を殺しまくります」という趣旨の煽り文がない

③第1話のタイトルは「『神の手違い』殺し①」だが“神の手違い”要素が現状出てきていない

④他のメンバーの前世を知っている魔女が転生者である可能性もある

 

 ざっと思いついただけでもここらへんがどうなるかわからない状態です。1話で盛大にコケたものの展開次第では今後面白くなる可能性も残されています。

 

 私の読みでは読者のヘイトを集める役割を持った孫のパロディっぽいキャラが何らかの理由で死ぬのは確定事項として(オバロとリゼロのパロディキャラも屍姦を見逃していたためやや死相が出ている)、魔女が使う魔法の代償かあるいは肉盾としてかは不明ですが主人公ポジっぽいリュートも死ぬんじゃないですかね。

 というのも首をへし折られたはずのリュートが目覚めた時、なんか隣にリュート以外の村人っぽい死体が不自然に転がってたんですよ。更にリュートが意識を失った場所と違う場所で蘇っていたのでそこらへんの描写には何らかの意図があったものと思われます。

 仮に「強力な魔法を使えるが代償として他人の命が必要となる」というのが魔女の使う魔法なのだとしたらそこの奇妙な描写にも説明がつくので、現時点で考えられる可能性としては頭に入れておきたいところです。

 

 原作者が賭ケグルイの人というのもあり「いかに頭を使ってチート能力を攻略し相手を社会的ないし物理的に殺すか」を期待している人も多いようですが、個人的には「いかに頭を使って生贄となる被害者を確保しながら転生者を殺すための条件を整えるか」という物語展開になっていくんじゃないかと想像しています。

 まあ実際どうなるかわからないんでマジで想像するだけですけど。少なくともリュートが魔女からチート能力を授かって他の転生者達とバトルする、という展開にはなりづらい構成となっていますからね。

 

 面白くなっていくんならそれはそれ、駄作のまま沈んでいくならそれもそれ。

 

 何にせよ創作者としての品性という面では絶対に褒められたもんじゃないのでそこは大人しく批判されとけと思いつつ今日のところはここらへんで。

 以上、久々のブログ更新でした。