アニメ感想文『回復術士のやり直し 第3話』
皆さんこんにちは。馬込巣立です。
今回もアニメ『回復術士のやり直し』の感想を書いていきたいと思います。
前回は薬漬けにされたと思ったら2話目にして早々にメイン復讐対象である王女を性的な意味で襲い、近衛騎士隊長を身代わりにして城から逃げた辺りまでやってましたね。
とりあえずノリで殺した罪無きモブ子二人に謝れよガンギマリホモ太郎。
動画はこちら
◆概要
城から出たケヤル改めケヤルガは身の安全を確保するため、フレア改めフレイアを連れて城下町から離れることに。
そして訪れたのは自由都市とは名ばかりの犯罪都市ラナリッタ。そこで彼は都市全体に蔓延しつつある病に目をつけ特効薬を作り、多額の金銭を獲得しました。
その金銭を用いて万が一に備えて自身の身を守るため奴隷を買うことにしたところ、自分と似たような復讐心に燃える瞳を持った少女を発見した……といった感じで3話終了と相成ったわけですね。
今回は前回よかまだマシって具合の仕上がりでしたので、まあまあ落ち着いて見ていられました。とりあえず良いとこ悪いとこ触れていきましょっか。
◆良かった部分
★各勇者に応じて使い分けられる薔薇
Aパートの回想シーンで術、剣、砲とそれぞれ三人の勇者がケヤルを虐待するシーンがあるんです。
で、そのシーンを見てみると別々の色の薔薇を画面に映してその時誰がメインとなっているかを演出しているんですよ。
まずテントの中で術の勇者・フレアが行動するフェイズでは逆さに縛られた青白い薔薇。
次に剣の勇者・ブレイドのフェイズでは周囲に咲き誇る黄色の薔薇。
そして砲の勇者・ブレッドのフェイズ、テントの中に散りばめられた赤い薔薇。
回想シーンが終わってから現在の時間軸、恐らくは癒の勇者・ケヤルガのフェイズとして用意されたのであろう場面では赤黒い薔薇が描かれています。
相変わらず演出面での技巧はお見事であり、単純な場面転換以上の意味も含まれているように思えてくるのですから凄まじい創意工夫と言えるでしょう。王女であるフレアを象徴する青白い薔薇が逆さまに縛られた状態で火の近くに置かれているところなどはなかなかに示唆的で興味深い。
内容こそアレな作品ですが、こういう細かな技術力によって騙される視聴者が一定数いそうで恐ろしいですね。
★セツナ(最後に登場した女奴隷)の立ち位置
本作の主人公であるケヤル改めケヤルガは復讐者として描かれていますよね。
そんな彼が自身の復讐のために肉盾として利用すべく奴隷を買おうと立ち寄った奴隷売り場で「自身の目的と無関係に復讐を遂げさせてあげようと思える相手」と出会う、この構図は物語として美しく感じました。
もちろん復讐を遂げさせる意図も自分が愉悦を感じるためというものなので、徹頭徹尾我欲に従った結果と言えます。ただこのシーンにおける目的意識のズレは今までの破綻しかしていなかったものと異なり、同じ方を向いて歩ける相手の獲得という形で話の末端に至るまでの道筋を示す要因足り得るのではないかと私は思ったんです。
簡単にまとめると「孤独に復讐の道を歩む者が心を許せる相手に出会う」ってシーンとして受け止めることが可能なんですよ。
これは「復讐を終えた後でどうするのか」という問いかけに対するアンサーを用意するため必要なギミックとなります。物語的に極めて重要な意味を持つ場面と言って差し支えないでしょう。
いやまあそんな風にならないって漫画読んでるからわかってるんですけどね。わかっていてもアニメ放送圏内ではそういう見方ができる構成になってるんですから、そこはそういう評価に落ち着くんですよ。
★稲田徹さんの名演技
これに関しては深く語りません。マジで凄かったので興味がある方はアニメ本編を我慢して見てください。
ただどうしても「こんなのに稲田さん出すなよ」という気持ちにはなってしまいました。
◆悪かった部分
★修正だらけのAパート
毎度指摘している気がしますが、このアニメ今回も性的・暴力的なシーンがあったんですよ。
まあこの感想記事を書き始めて3回目なのでそれだけだったらもう面倒だし指摘しなくていいかと思ってたものの、流石にAパートのほとんどが規制されたシーンで構成されてるとなると話は別です。時間を無駄にするな。
★ラナリッタの住民がクッソ頭悪い
今回出てきたラナリッタという街は病気が流行っていて、その原因というのが水源に投げ込まれた魔物の死骸なんだそうです。
この事実はケヤルガの翡翠眼で見抜いた情報なのですが、都市の管理者は原因究明したりしなかったんでしょうか?
変な痣が出ているってことは視覚的にもわかりやすい症状が特徴となるわけで、まず罹患者の共通項を調査しますよね。で、そこに共通項がなかったとなれば水源なんて真っ先に調査する対象じゃないですか。
ケヤルガが到着した時点で本格的に拡がるまであと一週間程度とか言ってましたけど、いかに金持ちつったって「あくまでも住民でしかない商人がこの街の伝染病の特効薬に興味を示している」って描写がある時点で管理側が病気の存在を認知してないはずないでしょ。
ていうかそこそこ立場のありそうな商人も気性の荒さから劣悪な扱い受けてる奴隷も同じ病気に罹ってる時点で緊急事態だと思うんですけど上の人らは何してるんですかね。
あとこの商人ってのも問題があります。
ケヤルガに薬を売りつけられ薬の有用性を確認する際、「ご自身で試してみては」って言われてマジで自分で試しちゃうの絶望的な知能としか言いようがない。
一応従者で試す描写はありますけど後遺症の確認とかも必要でしょうし、身近な従者一人だけでは明らかにサンプルとして不充分です。効能の確認は急務であると同時に綿密でなければならないんですが、そこを理解できてない奴がこれから薬を売ろうってのが滑稽極まる。
何より治安の悪い都市で生活してる割にリスク管理がド下手。あれが遅効性の毒だったら従者共々死んでますからねあのおっさん。
★ラナリッタに関するツッコミどころ
そもそもの話、自由都市って「何してもいいし誰も咎めないけど基本全部自己責任」って意味で自由っつってんじゃないですからね。「自由都市と言えば聞こえはいいが」という表現から察するに作者さんがそういう意味で履き違えているかもしれないので指摘しておきます。
正しくは公的な管理ではなく商人などによって自治的に運営されているため税収や軍役義務、場合によっては宗教国家における教義・戒律が適用されない場所ってだけです。普通に自治団体が管理してますし警察機関やそれに類似した役割を持つ組織もあるでしょう。マジで好き勝手やってたらとっ捕まります。
あと1話にて田舎出身でまだ右も左もわからないケヤルにフレアが「この街は美しいでしょう」みたいな自慢してたってことは、国としては国民にジオラル王国を素晴らしい場所として認識させようという意図が少なからずあるわけですよね。
このラナリッタって街は王都から東に向かって徒歩で数日の距離にあるみたいですけど、そんな馬使えば一日二日で到着するような場所に小汚い犯罪都市が広がってるって体裁悪くないですか。
作者さんが「西洋ファンタジー的異世界ならその辺りの情報は簡単に流れへんやろ今のネット社会じゃあるまいし」とでも思ってるのかわかりませんが、実際の歴史でもああいう時代って吟遊詩人の歌や旅人の噂で有名な国の有名な都市及び周辺環境は普通に流れますよ。
ゲームとかでも街からちょっと歩いた場所くらいで「ここから先は崖崩れが起きてて進めないよ」って情報くれるNPCとか普通にいるでしょ。ゲーム的に考えてもちょっと土地の感覚や人間の挙動を基礎的な部分で理解できていない描写になってしまっていますね。
★ケヤルガが奴隷を求める理由
「冒険者は腕利きだけど自分の都合で動くから信用ならない。腕利きでなくても肉盾として使える奴隷の方がいい」って理由で奴隷を買いに行ってましたけど、ぶっちゃけそれってフレアを肉盾にして瞬時に傷を回復させれば間に合うんじゃないですかね。
癒やす際に相手の人生を追体験するって設定は前回の時点でどっか行ってましたし、記憶も好き勝手に操作できるなら恨まれる心配もない。何より彼女は復讐対象なのですからそこに躊躇もないでしょう。
となると寧ろ倫理観が欠如している冒険者の方が戦力として微妙な奴隷なんぞより扱いやすくないですか。通常の報酬に加えてフレアを好きにしてもいいって条件も付け加えれば戦力増強と復讐を両立できる気がします。多分私が復讐するならそうするでしょうし。
というかマジで人間不信に陥ってるならそれこそ奴隷なんぞより防具を揃えるべきでしょ。盾や鎧は完全に意思を持たないので奴隷以上に裏切る可能性が低い。
あとここは私も「似てるなあ」と感じたので言及しますが、獣人の少女って共通点からも察せられるように多分この奴隷を買い求めるシーンって盾の勇者の成り上がりをイメージして作られたんじゃないかと思うんですよね。まあこの程度ならパクリとまでは言いませんけども。
ただ問題として先に述べた点や盾の勇者との設定の相違点などからわかるように、ここで奴隷を買う必要性自体があまりないんです。別に他作品を参考にして話を構築することそれ自体は全然問題ないんですけど、人気作品を参考にして「参考にしました!」で終わってるならそれに創作物としての価値は無いんですよ。
◆総評
コミカライズ版での予習に加えて設定の説明が多かった分、2話よかよっぽどマシでした。なので今回は今までで一番ダメージの低い回となったものの、その代わりツッコミどころがえらいことになってましたね。
他にも言いたいことは色々あったんですが(「死体が腐り切れば汚染が収まる」という謎理論など)、あまり細かい話してるとキリがないので一部省略しました。
しかしこのアニメ見てると改めてハイファンタジーの難しさが実感できます。
今回明らかになった世界観のボロボロ具合を見るに一から世界を作るのって結構大変なわけですよ。私なんかはそういうの面倒なので最初からどうとでも言い訳できる世界観にしてしまうんですが。
普通に剣と魔法の世界を作るってなるとまあこうなってしまうんでしょうかね。そう思うと神ゲーと名高いゼルダの伝説ブレスオブザワイルドはシンプルながら最適解を導き出している実例なのかもしれません。
ひとまず3話の感想はここまでとしておきましょう。
色々言いましたがやっとこさ話の内容について褒められる部分があったので今後の流れがどうなるか、これまで通り偏見を廃した目で見定めていきたいと思います。
では、また次の記事でお会いしましょう。